「5万円の壁」金の動き闇に 地方議員政活費支出、空白の報告書 / 京都新聞

支出の明細が公開されなくなる「5万円の壁」-。2017年分の京都府議と京都市議が関連する政治団体政治資金収支報告書を調べると、この基準が障壁になり、政治活動を巡る金の動きの多くが見えにくくなっている。詳細を明らかにしなくてもよい人件費の問題もあり、地方議員の支出のブラックボックス化が浮き彫りになった。

■5万円未満の支出、目的・支払先も全て空白

 支出の目的や金額、年月日、支払先を記す欄は全て空白。中堅の京都市議が代表の政党支部は、政治活動費の「組織活動費(交際費)」名目で総額約514万円を支出している。しかし、収支報告書には1件5万円未満を一括計上する「その他の支出」にこの総額が記載されているだけだ。どのような目的で誰にいくら支払ったのかは、全く分からない。

 この市議によると、地域団体の総会参加費や支援者との会合で多くを使っているという。市議は「市民目線から考えても、透明化には賛成だ」としながら、「(全ての支出の公開が義務付けられる)政務活動費の分だけでも事務作業は膨大なのに、政治資金の公開基準が国会議員並みになると、かかる労力と時間は大変な量になる」と懸念する。

 別の府議資金管理団体では、5万円以上の支出として「車両修繕費 14万円」「政治団体の総会 135万4920円」など計約181万円分は明らかになっているが、残りの約664万円分は詳細が分からなかった。

■国会議員は「サッカー後援会」「力士激励会」も支出公開

 国会議員の場合、1万円超が公開基準になる。京都から選出された複数の国会議員の支出を調べると、「プロサッカーチーム後援会費 1万5千円」「京都ゆかりの力士の激励会費 1万2千円」などの記載が見つかった。これが政治活動といえるかどうかは議論が分かれるが、少なくとも国民はチェックできる。

 もう一つの課題の人件費については、地方議員も国会議員も同じで、収支報告書に総額のみ記載すればよいことになっている。別の中堅市議の資金管理団体では、総支出額約859万円のうち、約283万円が人件費として計上されていたが、詳細が明らかになることはない。

 「5万円の壁」や人件費などによって、金の動きがつかめなくなるパターンは他にもある。

 議長経験者の市議が代表の政党支部は、支出の全額294万円を自身の名前を冠する後援会へ寄付しており、後援会は他の収入を合わせたほぼ全額を、詳細が公開されない人件費や事務所費に支出していた。この政党支部は5万円未満の支出がなかったため見かけ上の透明性は高くなっているが、具体的な使途は全く見えてこない。

■「全部明らかにすべき」

 議会や行政を監視する市民団体「京都・市民・オンブズパースン委員会」の浅井亮弁護士は「政務活動費のように、全ての支出を明らかにすべき」と訴える。原資が税金の政務活動費は調査研究などの経費として地方議員に支給されている。京都府議、京都市議の場合、全支出が公開対象となっている。

 かつて京都市議会でも政務活動費(以前は政務調査費)の公開基準が「5万円以上」だった時代があり、京都市では監査委員が06年度の支出のうち約1億3400万円が目的外使用に当たるとの監査結果を公表したこともある。不正や疑問視される支出は全国で相次ぎ、制度の見直しで透明化が進んだ経緯がある。

 浅井弁護士は「1円以上の全てが公開されるようになり、おかしな支出は少なくなった。今の制度では、国民が判断できる情報が与えられていると言えない」と指摘する。

 

政治団体の支出明細公開基準】

 地方議員や首長の資金管理団体は、事務所費などの経常経費と政治活動費の双方で、5万円未満の支出は明細を収支報告書に記載しなくてよい。資金管理団体以外で地方議員が代表となる政党支部などの団体は、経常経費全ての明細も記載しなくてよい。一方、国会議員が関係する政治団体は、1万円を超える支出は明細の記載が必要。ただし地方議員、首長、国会議員の団体とも、経常経費に含まれる人件費は総額のみの記載で、明細は不要となっている。